店員(職人)の対応から、好き嫌いが完全に分かれるとんかつ屋である。
暖簾をくぐった瞬間に、カウンターから抑揚のないトーンで「とんかつですか?」。
初めての客はまず「?」である。しかしそこで言葉に詰まってる間もなく、
追い討ちを掛けるかのように2度目の「とんかつですか?」の声。
状況を理解出来ないまま咄嗟に「は、はい……」。
さすがに次回からは大丈夫だろうけど、初めての人は全く意味が分からないはずだ。
要はとんかつ=ロースカツで、
他にヒレカツのみの2種類しか扱わない筋金入りのとんかつ屋で、
入ってきた客全員に定番のロースカツを頼むかどうかを一方的に確認しているのである。
そして、そんなスタンスの店だからもちろん店内は私語厳禁の雰囲気が漂い、
みんな黙々と食事に没頭するしかない。
もちろんカップルや友人で来ても店員が隣同士に座れるよう調整することなどは有り得ず、
空いた所から配置させる問答無用のスタイルである。
感じが良い店とは決して言えないのだが、
そんなネガティブな要素を払拭する旨さが「いもや」の強みだ
(ちなみに他の飲食店では有り得ないこの主従関係が逆に心地よかったりするのだが)。
隅々まで掃除が行き届いた清潔感溢れる店内、
そして目の前で揚げられてゆく750円のロースカツ定食を早速食してみる。
油くささは全くなく、カラっと揚げられたカツをひと噛みすると、
程よく脂の乗ったジューシーな旨味が口の中いっぱいに広がる。
この多すぎることない絶妙な脂量を保持した肉の選択に、
長年培った揚げ具合。1人前でもかなりの量があるのだが、
不思議と食後の「もたれ」は皆無だ。これは主役の肉を始め、
揚げに使うパン粉に至るすべてに拘り抜いた食材と技術の成せる業であろう。
更に、さり気にカウンターに配置されたおしんこである。
よくある取り放題の体ではあるが、その味は衝撃的ですらあり、実にご飯と合うのだ。
これほど見事なおしんこと出会う機会は滅多にない。
これをご飯に溢れんばかりに盛って、とんかつと交互に楽しむのがオススメの食べ方である。
パンチ力:4.0
おもてなしの精神:2.0
コストパフォーマンス:4.0
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